『CLEAR GARDEN』

    「Clear days」P11より


 ひらひらと舞い落ちて来る花弁を手の平で受け止めながら元基の肩に頬を預けた。それだけで目蓋を閉じてしまいそうになる。それは体温がじわりと上がるような、体の奥の方から溢れてくる想いだ。
 元基はいつもこうして晴之の精神に直に触れる。無意識に、哀しいくらいに優しい温度で。
 僅かな隙間を埋めるように更に元基の方へと体を寄せると、それを支えるように晴之の肩に腕が回された。包み込むように抱くその腕には確かな愛情が滲んでいるというのに。
 ──何を不安に思うことがあるというのだろう?
「……」
 無言のまま元基の上着の胸元を掴んで引っぱると、穏やかな視線が晴之に向けられた。
 彼が何かを口にする前に強請るように顎を上げ、睫毛を伏せる。
 服を掴む指先が、微かに震えた。
 頬に手が添えられる感覚と共に唇がそっと塞がれる。
 静かに流れ込んでくる熱に目眩がしそうだった。ただ軽く押し当てられているだけなのに、全身の力が抜けていく。
 その時、ふいにしっとりとした桜の花弁が伏せた目蓋を掠めて滑り落ちていった。それが元基の髪を伝って落ちてきたものだと思うと、触れたところがじわりと熱を持った。幻のように不確かで確かな熱を落とす元基の口付けと、どこか似ている。
 風に消える花弁のように、唇を暖めた日溜まりのような口付けもまたいつものようにすぐに去っていった。
 それを追ってしまいたくなる気持ちを抑えて、にっこりと微笑んだ。
 口付けを交わす度に胸のほんの端の方を灼くあのチリリとした微かな痛みが再び晴之の胸を襲った。
 強請るとすぐに包んでくれる、腕。
 望めば与えられる、唇。
 注がれる愛情を疑うつもりはないし、むしろ自分は愛情に関して言えば与えられることよりも与えることの方が好きだった。
 それなのに望んでしまうのはやはり間違っているだろうか──もっと求められたいと願ってしまう、この想いは。