『marble marble』

    「after game」P20より


 口付けを繰り返しながら伊角のシャツのボタンに手をかけると、ふいに伊角の手が伸びてきて和谷の動きを止めた。
「…ちょっと…待った」
 弾む息を整えようと荒い呼吸を繰り返しながら伊角がそう言い、和谷の胸を押して躯を離す。
「伊角さん?」
 羞恥や焦りといったいつものそれとは違う意志の強さを感じる制止に、和谷は動きを止めて伊角を見遣った。
「どうかした?」
 俯いたまま黙り込んでいる彼に、具合でも悪いのかと思って覗き込むようにして訊ねるとゆるゆると首を振られる。
 その拍子に目元を隠していた前髪の間から真っ赤に染まった頬がのぞいた。
 伏せられた睫毛の影が滑らかな頬の上で微かに揺れている。
 羞恥に耐えているようなその様にゾクリと甘い痺れが和谷の背中を走った。
「…自分で脱ぐ」
「え?」
「だから、自分で脱ぐ」
「え?」
 耳慣れない言葉に、馬鹿みたいに訊き直すと、
「だって俺がその…誘うんだろ?」
 消え入りそうな低い声で伊角がボソッと呟いた。