オマケ。
碁会所に向かう道を3人はだらだらと歩いていた。
先頭はヒカルで、その後ろに和谷と伊角が並んでいる。
──なあ、佐為。和谷と伊角さんってすげぇ仲いいよな。棋院以外でもしょっちゅう会ってる
みたいだしさ。
──そうですね。彼らを見かける時にはたいていふたり一緒にいますね。
後方の二人を肩ごしにちらりとうかがうと、さっきまで不機嫌そうにしていた和谷が何やら嬉
しそうな顔で伊角の横顔を見上げていた。
──それにさあ、和谷って伊角さんがからむとすっげームキになると思わねぇ? 若獅子戦の
ときだって真柴さんに掴みかかったらしいしさ。
──ええ。彼らこそ真の親友なのでしょうね。
──んー、ちょっとうらやましいよなー。…おっと、ここかな?
「ねえ、ここだよね?」
「ああ」
「入ろう」
ヒカルは地下へと続く階段を降り始めた。
少し離れた後ろから、和谷と伊角の足音が続く。
──うらやましいんですか? ヒカル?
──だってさ、気が合ってしかも碁も競い合える仲なんてさー。まあ、オレには佐為がいるか
らいいけど。
──ヒカル〜ッ!!
喜んだ佐為がヒカルの周りを飛び回る。
──でも幽霊が親友っていうのもなー。……ああ悪い悪い。そんなに急に落ち込むなよ。
──…どうせ幽霊ですよ……。
──佐為〜!
──冗談です。ほら、ヒカルにはあかりちゃんがいるじゃないですか。…それから塔矢アキラ
も。
──な、なんで塔矢がっ!
──ライバルとしてはもちろんですけど、結構いい友達にもなれると思うんですけどねえ。
……あああっ!?
ちらりと後ろを見たとたん急に大声を出した佐為に、ヒカルがぎょっとする。
──なな何だよ佐為!? びっくりすんだろ!? ……どうしたんだよ、オマエ。顔赤いぞ?
真っ赤な顔をしてあたふたとしている佐為を怪訝そうに眺めたヒカルは、何事かと後方のふた
りを振り返った。
ヒカルの視線に気づいた伊角が明らかにぎょっとした様子で、なぜかすぐ側にいた和谷から飛
び退くように離れた。
──あれ? 伊角さんまで顔赤いじゃん。
「どうかしたの?」
「どうもしないよ!!」
ヒカルは真っ赤な顔でわめいた伊角と平然とした顔の和谷をぽかんと眺めた。
「伊角さん、何かしたの?」
「えっ」
伊角がますますぎょっとした顔をした。
──ヒカル、伊角さんは何もしてませんよ…
「ああ、じゃあ和谷が何かしたんだ?」
佐為に話し掛けたつもりがつい声に出して言ってしまった。
その瞬間。
「うわあああ、ちょっと伊角さん!! 大丈夫!?」
「い、伊角さん!? どうしたの!?」
突然階段を踏み外して滑り落ちた伊角を、和谷とヒカルが慌てて支える。
抱き起こそうとした和谷に、耳まで赤く染めた伊角がわめいた。
「和谷は触るな! あっち行け!」
「ひでぇな、伊角さん。…やなこった」
やけにニヤけた和谷が抗議の手を無視して腕を差し入れた。
──何なんだいったい…。
唖然とふたりを見つめるヒカルに、佐為がぽつりとつぶやいた。
──ヒカル、先程の私の言葉は撤回します…親しくなるのはあかりちゃんだけにして下さい…。
結局この日の団体戦での対局は2-1で勝ち。負けたのはもちろん伊角である。
fin.
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