<木花さんパートあらすじ>
「何でおまえこんなとこに居るんだよ!?」「なんでっておまえに会いにきたんだぜ」部室に入るとそこには榛名がいた。驚き慌てる準太を気にする風もなく、榛名が準太にせまる。「どーせおまえは誰も選べないんだからさ。俺にしとけって」

<七瀬パート>


 「ちょ、離せって…!」
  榛名の腕を振り解こうとした瞬間、ぐらりと視界が揺れて準太の膝から力が抜けた。
 「おっと! え、何? どうした?」
  咄嗟に準太の躯を抱きかかえて支えた榛名が、驚いたように準太の顔を覗き込む。
 「…何でも…ない」
 「あれ、おまえもしかして熱あんじゃねぇの? あーなるほど、それで早退するとこだったと
 か?」
  気を抜くと力が抜けそうになる躯を何とか奮い立たせて榛名から離れようとしたがしっかりと
 腰を抱いた腕はびくともせず、かえって彼にしがみつくような形になってしまった。
 「へぇ」
  ふいに榛名の指が顎にかかり、上向かされる。
 「熱っぽい顔もなかなかソソるな」
 「…っ」
  間近で覗きこまれた榛名の顔は思いのほか真剣で、感心したように呟かれて準太は頬に熱が上
 がるのを感じながら身じろいだ。
 「離せよっ」
  熱のせいかそれとも別の何かのせいなのか微かに震える声で呟いて、力の入らない手で榛名の
 胸を押し返す。
 「まあまあそう暴れんなって、こんなとこでぶっ倒れたりしたらどうすんの? とりあえず行こ
 うぜ。おまえの荷物どれ?」
 「…行くってどこにだよ」
 「ん? 俺ンち」
  さらりと告げられた答えに唖然とし、一瞬言葉を失う。
 「な…冗談言ってんなよ! 俺は帰る!」
  我に返って再び彼の腕から逃れようともがき始めた準太に、
 「大丈夫だって。今日ウチ誰もいねーから」
  ニッコリと無邪気とも言える笑みを見せて榛名が、準太を抱えたまま勝手に『高瀬』とプレー
 トに書かれているロッカーを開けて荷物を取り出した。
  何がどう大丈夫なんだと怒鳴ろうとしたとたんに再び目眩に襲われて、不本意ながら榛名の制
 服のブレザーにしがみつく。
 「もうそのままのカッコでいいよな。どのみち電車は無理そうだし、タクシー拾おうぜ」
  どこか楽しそうですらある声でそう告げると、空いている方の手で荷物を無造作に掴み上げて、
 榛名は準太を抱えたまま部室を後にした。








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