<木花さんパートあらすじ>
榛名の部屋で彼が席を外している間に仕方なく借りた服に着替えた準太はそれが自分には少し大きいことにショックを受ける。そんな準太を色っぽいと言って眺めた榛名が、「おまえ具合悪そうだから抱くのは勘弁してやろうかと思ったけど無理っぽいわ」などと言い出し始めて…。


<七瀬パート>


 「まあ取りあえず、水分とれよ。何か少し顔色よくなってきてるみたいだけどさ」
 「……」
  抱くだの躯の相性だのと投げられた不穏な言葉に今すぐ逃げ出すべきなのではないだろうかと
 気が急いたが、部屋のドア側にいる榛名の手をかいくぐって逃げられるとも到底思えなかった。
  何とか隙をついて逃げるしかない。
  機会を待とうと混乱している頭で考えながら、何やらひどく機嫌のいい榛名がにこやかに差し
 出してきたグラスをおずおずと受け取った。
  手の平に伝わるその冷たさに急に喉の乾きを思い出して口をつけると、ジュースの甘さが口の
 中に広がった。
  一息に飲み干してしまいそうになるのを抑えてゆっくりと喉に流し込んでいくと、冷たい流れ
 が躯を通り抜け、呼吸が少し楽になり躯も心持ち軽くなったような気がした。
  ふ、と思わず細い息が漏れる。
  クスリと笑う気配に顔を上げると、榛名の視線とぶつかった。
  彼が自分のグラスには手をつけずにこちらをじっと見ていたことに気がつき、カァッと頬に熱
 が上がるのを感じて準太は視線を泳がせた。
 「落ち着いた?」
  クスクスと笑みをこぼしながら訊ねてきた榛名の声が思いのほか優しくて、居心地の悪いよう
 な奇妙な焦りが鼓動を速くする。
 「ほんとおまえさ、たまんねーわ」
  呟いた榛名が準太の手からグラスを取り上げ、その中に残っていた氷を無造作に口に含むのを
 ぼんやりと眺めた。
 「…!」
  顎にかけられた指の感触にハッと我に返った時にはすでに遅く、噛み付くように合わされた唇
 の隙間から榛名の舌が準太の口内に強引に割り込んできた。
  熱い舌と共に、冷たい氷の欠片が押し込まれる。
 「……ん…っ」
  逃げようとした舌を絡み取られて強く吸われた。
  頭の芯が痺れるような熱さと溶けていく氷の冷たさが混じり合い、目眩にも似た感覚に襲われ
 た準太は榛名のシャツを握りしめて固く目を瞑った。








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